当院で実際に処方しているツムラの漢方薬を番号順に掲載し、整形外科での使用目的や注意点を院長が解説します。日々の外来で経験した使用感や使い分けのポイントも含めています。すべて保険診療で処方可能です。
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適応:肩こり・頚部筋筋膜炎・風邪初期
後頚部〜肩の筋緊張緩和、体を温め血流改善。麻黄を含むため短期投与が基本。
適応:肩こり・頚部筋筋膜炎
葛根湯と同効能だが麻黄を含まず長期処方が可能。
適応:加齢による腰痛・下肢しびれ・夜間頻尿(冷えのない方)
加齢による体力低下に用いる補腎剤。下肢の冷えを伴わない慢性症状に。実証(体がしっかりした方)に適応あり。
適応:慢性疼痛に伴う不眠・不安・精神症状
精神的緊張・不安からくる不眠の症状に。
適応:上肢の浮腫・手根管症候群・めまい・二日酔い・気圧変化による頭痛・中心性脊髄損傷後のしびれ
水分代謝を整える利水剤の代表。雨天・気圧変化で症状が悪化する方に特に有効。脳外科領域では脳浮腫の治療にも用いられている。小児の胃腸炎などでも用いられる副作用の少ない薬。神経の浮腫が病態となっている疾患に有効で、上肢に有意に作用するのがポイント。当方の使用経験では、中心性脊髄損傷(上肢有意の脊髄損傷)の方に使用すると、しびれの症状が通常の経過よりも1週間程度早く改善する例あり。慢性硬膜下血腫術後の再発予防効果も報告されている(Isobe K, et al., Neurol Med Chir 51(3), 2011)。
適応:頚椎症性神経根症・頚椎椎間板ヘルニア・へバーデン結節・ブシャール結節・関節炎
ミロガバリン等でふらつきが強い方のしびれに処方。小関節の痛みにも有効。へバーデン結節への有効性は学術報告あり(小野村, 漢方医学 26(1), 2002)。
適応:アレルギー性鼻炎・花粉症・風邪の鼻水
水様性鼻水に有効。アレルギーがない方にとっては、数少ない鼻汁を抑える薬。
適応:変形性膝関節症(膝の水・腫れ)・肥満を伴う関節痛・下肢のむくみ
色白・むくみやすい「水太り」タイプに向く。膝関節の水腫を軽減し痛みを和らげる。むくみ・便秘も改善する。変形性膝関節症の関節水腫に対する有効性が報告されている(宮本ほか, 日本東洋医学雑誌 55(4), 2005)。
適応:骨折・捻挫術後の腫れ・軟部の腫脹
血行障害(瘀血)を改善する駆瘀血剤の代表。骨から皮膚の間の中間層の微小循環を改善する。NSAIDsが使いにくい場合の代替としても有用。下肢骨折術後の腫脹が有意に早く消退することが報告されている(中川ほか, 日本東洋医学雑誌 61(2), 2010)。
適応:風邪初期(発汗前)・インフルエンザ
体力がある方の風邪初期・発汗前に。免疫応答を高め解熱を促す。発汗が得られるまで2〜3時間おきに飲むのがコツ。短期投与が基本。インフルエンザに対するランダム化比較試験で早期の解熱効果が確認されている(Nabeshima S, et al., J Infect Chemother 18(4), 2012)。
適応:偽痛風・急性関節炎・関節リウマチ・熱感・腫脹を伴う関節痛・原因不明の高齢者の下肢腫脹
熱を冷まし腫れを取る。腎機能低下でNSAIDsが使えない偽痛風にも有用。原因不明の高齢者の足のむくみ・腫れにも有効。
適応:乾燥性の咳・のどの乾燥
潤いを補い乾いた咳を鎮める。慢性の乾燥症状に。
適応:のどのつかえ感
自律神経の乱れによる咽喉頭異常感・不安感を改善。
適応:手足の冷え・冷えによる腰痛・下肢痛・しもやけ
手足の冷えが非常に強く、冷えると痛みが増悪する方の腰痛・下肢痛の第一選択。飲んでも冷えが取れない場合はブシ末(2〜5g)を追加することで改善を得られることがある。
適応:尿路結石(排石促進)・泌尿器症状
尿路の炎症や排尿困難、結石の排出促進に。結石が尿管に詰まっているときの痛みには芍薬甘草湯と併用することが多い。
適応:術後・病後の体力低下・COVID後遺症・フレイル・風邪後のだるさ
胃腸を整え体力・免疫力を回復する補気剤。骨折術後のリハビリ支援にも用いる。高齢者における栄養状態(アルブミン値)の改善効果も報告されている(Satoh N, et al., J Am Geriatr Soc. 53(6), 2005)。
適応:胃腸障害・慢性疼痛治療薬の悪心・食欲不振
食欲低下を改善する処方。トラマドールやテリボン(骨粗鬆症治療薬)の副作用としての食欲不振にも用いることができる。
適応:足底腱膜炎・付着部炎(鵞足炎など)・慢性筋肉痛・腱鞘炎
筋肉の浮腫と炎症を和らげる。慢性の筋肉症状に。
適応:慢性腰痛・坐骨神経痛・腰椎椎間板ヘルニア・全身の痛み・こむら返り(第二選択)
血行を改善し冷えを除く。成分が豊富で全身の様々な症状に効く。芍薬甘草湯で効果がないこむら返りへの第2選択。芍薬甘草湯と併用することで改善が得られる場合もある。
適応:慢性疼痛(長期化・NSAIDs無効)・交通事故後遷延痛・認知症周辺症状
精神的要因が絡む長期の痛み・イライラ・不眠に。せん妄など認知症周辺症状にも有効。慢性疼痛ガイドラインにも有用性の記載あり。難治性の神経障害性疼痛に対するVAS値の有意な改善も報告されている(Ebisawa S, et al., J Nippon Med Sch 82(2), 2015)。
適応:肥満(脂肪太り)・便秘
体力があり腹部に脂肪が多い方の体重管理補助。高度の肥満でないと効果は乏しい。便秘にも有効。
適応:急性腰痛(ぎっくり腰)・こむら返り・尿路結石発作時
筋肉の急激な痙攣をほぐす即効性のある処方。頓服が基本。毎日服用する場合は1日1包が望ましい。作用時間が5分から6時間程度なので、明け方にこむら返りを起こす場合は眠前に内服するのが良い。甘草の副作用(偽性アルドステロン症)に注意し短期使用にとどめる。
適応:五十肩(肩関節周囲炎)
肩関節周囲炎の第一選択薬。ヒアルロン酸注射・リハビリとの併用で効果を高める。整形外科学会でも有効性が報告されている(元島ほか, 肩関節 27(3), 2003)。
適応:打撲・捻挫・骨折後腫れ・術後浮腫
骨膜の損傷に伴う痛みに効果があり、肋骨骨折では1週間ほどで痛みがとれる場合もある。胃・腎臓に問題があってNSAIDsが使えない方にも安全。
適応:乾燥性の咳・のどの乾燥
のどの潤いを補い慢性の乾燥症状を改善。感染後咳嗽などに有効。
適応:高齢者の腰痛・下肢しびれ・夜間頻尿(冷え症の方)
八味地黄丸に利水の生薬を加えた処方。下肢の冷え・しびれ・浮腫・頻尿を伴う高齢者に特に有効. 腰部脊柱管狭窄症への有効性も報告されている(小川ほか, 日本東洋医学雑誌 58(2), 2007)。
適応:長期療養後の体力低下・フレイル・抗がん剤後の神経症状
体力回復を促し、リハビリを支える。抗がん剤による末梢神経障害にも用いる。
適応:手根管症候群・ばね指
抗炎症作用と利水作用を合わせ持つ。神経の浮腫・炎症が病態である手根管症候群の保存的治療に用いる。長期使用では間質性肺炎等のリスクがあるため定期的な経過観察を行う。
適応:皮膚・軟部組織の感染・蜂窩織炎
化膿した皮膚・軟部病変の治療補助として処方することがある。
適応:強い冷えを伴う慢性疼痛・他の漢方薬への追加投与
強力な温め・鎮痛作用。単剤では使用できず、他の漢方薬に追加する形で用いる。2g程度より開始し、5g程度までとする。ツムラより分包された製剤あり。
【主な参考文献】
小川 健次, ほか: 腰部脊柱管狭窄症に対する牛車腎気丸の臨床効果. 日本東洋医学雑誌 58(2): 247-254, 2007.
宮本 健史, ほか: 変形性膝関節症の関節水腫に対する防已黄耆湯の治療経験. 日本東洋医学雑誌 55(4): 501-506, 2005.
中川 貴雄, ほか: 下肢骨折術後腫脹に対する桂枝茯苓丸の有用性. 日本東洋医学雑誌 61(2): 186-191, 2010.
Nabeshima S, et al.: A randomized, controlled trial comparing traditional herbal medicine and neuraminidase inhibitors in the treatment of seasonal influenza. J Infect Chemother. 18(4): 534-543, 2012.
Isobe K, et al.: Efficacy of goreisan in preventing recurrence of chronic subdural hematoma. Neurol Med Chir (Tokyo). 51(3): 197-201, 2011.
Satoh N, et al.: Beneficial effects of Hochuekkito on the nutritional status of elderly people with low serum albumin. J Am Geriatr Soc. 53(6): 1092-1093, 2005.
Ebisawa S, et al.: Yokukansan for neuropathic pain: a randomized controlled trial. J Nippon Med Sch. 82(2): 86-93, 2015.
この記事の監修:辻 大祐
辻整形外科クリニック院長(石川県金沢市)
日本整形外科学会 専門医
日本骨粗鬆症学会 認定医
日本リハビリテーション医学会 認定臨床医