辻整形外科クリニック(金沢市横川)|整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科
金沢市で漢方を保険処方している整形外科です。腰痛、冷え、しびれ、膝の水、こむら返り、へバーデン結節など、整形外科疾患に有効な漢方薬を院長が解説。西洋薬のみでは改善しにくい慢性症状へのアプローチや、当院での活用事例をご紹介します。

整形外科疾患(腰痛・冷え・しびれ)に対する漢方の活用事例|辻整形外科クリニック

漢方の処方例|漢方を保険処方している金沢市の整形外科

▶ 当院で使用する漢方薬一覧(ツムラ番号順)はこちら

近年漢方の注目は高まっており、作用機序や効果実績が証明されているものも増えてきました。漢方薬は様々な生薬から構成される多型成分の集合体であり、含まれる生薬の種類によって効果は様々です。基本的には、生薬の種類が少ないほど効果が鋭く短期間で発現し、多いほど効果は緩やかになります。
西洋薬においては、特に「温める」ことと「静脈からの循環障害を改善させる」ことがあまり得意ではありません。また、「むくみ」に対して利尿薬のみで対応しようとすると、体全体の水を減らすことになり、電解質のバランスも崩れることになります。
しかし、整形外科領域ではこの「冷え」から来る症状と「局所の循環障害」「浮腫」が原因となる症状も少なくありません。漢方薬を使うことで、これらの症状に対するアプローチを容易にし、体が本来あるべき姿に持っていくことができます。以下、サイエンス漢方処方に基づいて、各々の症状に対する処方例をお示し致します。

上肢の症状

□肩こり

▶ 主な適応疾患:頚椎症性神経根症・頸肩腕症候群・肩こり
肩こりや後頚部の筋緊張を緩和する葛根湯(かっこんとう)の処方例
葛根湯(かっこんとう)【ツムラ1番】 風邪薬として有名ですが、後頚部から肩にかけての筋緊張を緩和させる効果があります。血圧上昇させる麻黄(まおう)が含まれているため短期間での内服となります。
桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)東洋薬行麻黄を含まないため、長期間投与が可能です。長引く肩こりの方に有効です。


□第1関節の痛み

▶ 主な適応疾患:へバーデン結節
{指の第1関節が痛むへバーデン結節の症状と、治療に用いる漢方薬・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)}
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)【ツムラ18番】 小関節の痛み、ふしぶしの痛みに対して有効です。作用はゆっくり効くので、効果実感まで2-4週程度はかかります。有効性については学術報告もあります(小野村, 漢方医学 26(1), 2002)。


□手のしびれ

▶ 主な適応疾患:手根管症候群頚椎椎間板ヘルニア頚椎症性神経根症
頚椎症による手のしびれや手根管症候群に用いる漢方薬のイメージ
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)【ツムラ18番】 プレガバリンなどの西洋薬が比較的即効性が高いため出番は少ないかもしれませんが、同薬剤の副作用である眠気が強く飲めない場合の頚椎症などで処方されます。
柴苓湯(さいれいとう)【ツムラ114番】 手根管症候群が原因のしびれに対して、神経の浮腫や炎症を抑える効果があります。
五苓散(ごれいさん)【ツムラ17番】 手根管症候群における神経の浮腫に効果があります。柴胡(炎症をおさえる成分)が入っているかどうかが、柴苓湯との違いです。本剤の方が長期的には使いやすい薬です。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)【ツムラ108番】 抗がん剤の副作用が原因である場合は、神経の軸索障害が主体であり、本剤が適応となります。術後・病後の体力低下や高齢者のフレイルにも処方します。


□上肢のむくみ

▶ 主な適応疾患:上肢・手指の浮腫・腱鞘炎
上肢のむくみや水分代謝を整える五苓散(ごれいさん)の活用
五苓散(ごれいさん)【ツムラ17番】 体内の水分の配置を自動的に調整する働きがあります。上肢のむくみに対して有効です。雨天・気圧変化で症状が悪化する方にも適応となります。


□指が引っかかる(ばね指)

▶ 主な適応疾患:ばね指・腱鞘炎・手根管症候群
指の引っかかり(ばね指)や腱鞘の炎症を改善する柴苓湯(さいれいとう)
柴苓湯(さいれいとう)【ツムラ114番】 腱鞘の炎症や浮腫を改善させます。ただし長期に使用すると間質性肺炎などの副作用を引き起こすリスクが高くなるため、その場合は五苓散(ごれいさん)【ツムラ17番】に変更して継続します。


下肢症状

□足のしびれ

▶ 主な適応疾患:腰部脊柱管狭窄症腰椎椎間板ヘルニア・変形性脊椎症(加齢による下肢しびれ)
足のしびれや冷え、頻尿を伴う症状に用いる牛車腎気丸・八味地黄丸
冷えがある場合 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)【ツムラ107番】
冷えがない場合 八味地黄丸(はちみじおうがん)【ツムラ7番】。浮腫みや頻尿の症状も改善させます。ご高齢・虚弱な方は牛車腎気丸がより適応となります。効果発現までは4週程度と時間がかかる場合が多いです。腰部脊柱管狭窄症に伴う下肢しびれへの有効性は学術報告でも示されています(小川ほか, 日本東洋医学雑誌 58(2), 2007)。


□膝に水が溜まる

▶ 主な適応疾患:変形性膝関節症・膝関節水腫
変形性膝関節症による膝の水(関節水腫)を改善する防己黄耆湯
防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)【ツムラ20番】 関節の水腫を改善させます。色白でむくみやすい方、疲れやすい方(いわゆる「水太り」タイプ)に特に有効です。便秘症状も改善させます。


□下肢のむくみ

▶ 主な適応疾患:下肢浮腫
{下肢のむくみ(浮腫)の症状と、体格や腫れ方に合わせた漢方薬(防己黄耆湯・越婢加朮湯)の使い分け解説}
防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)【ツムラ20番】 色白でむくみやすい方に有効なむくみの処方です。
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)【ツムラ28番】 体力がありがっちりした体格の方や、赤黒く腫れるような下肢のむくみに対して効果があります。


□足が冷える

▶ 主な適応疾患:冷えによる腰痛・下肢痛・しもやけ
足先の冷えや血行障害を改善し体を温める当帰四逆加呉茱萸生姜湯
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)【ツムラ38番】 血行を良くして手足を温めます。寒い日や雨の日に痛みが強くなる方に特に有効です。このお薬のみで冷えが取れない場合は、附子末(ブシ末)を追加します(2〜5g/日程度)。


□足がつる(こむら返り)

▶ 主な適応疾患:こむら返り・下肢筋痙攣
足がつる症状(こむら返り)に即効性のある芍薬甘草湯の処方
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)【ツムラ68番】が第1選択の治療薬ですが、効果がない場合は疎経活血湯(そけいかっけつとう)【ツムラ53番】が第2選択の薬となります。芍薬甘草湯の作用は5分から6時間程度です。明け方に発作が起きる方が多いので、その場合は眠前に内服することが推奨されます。


全身の症状

□急性腰痛症(ぎっくり腰)

▶ 主な適応疾患:急性腰痛症(ぎっくり腰)・椎間関節捻挫
ぎっくり腰などの急性腰痛に有効な芍薬甘草湯と葛根湯の組み合わせ
芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)【ツムラ68番】葛根湯(かっこんとう)【ツムラ1番】の組み合わせが有効です。いずれも筋緊張の緩和に働きます。甘草の量が多くなるため、短期間での内服となります。


□慢性的な腰痛とその他様々な症状

▶ 主な適応疾患:慢性腰痛腰部脊柱管狭窄症腰椎椎間板ヘルニア・坐骨神経痛
慢性的な腰痛や神経痛の血行を促進する疎経活血湯(そけいかっけつとう)
疎経活血湯(そけいかっけつとう)【ツムラ53番】 局所の血行を促進させます。成分は豊富であり、効果発現は緩徐になります。冷えを伴う下肢の慢性疼痛・神経痛に幅広く用います。
八味地黄丸(はちみじおうがん)【ツムラ7番】 なんとなく腰が重だるい、腰が曲がってきて足が前に出なくなってきたといった加齢性の症状に効果があります。


□骨折や術後の局所の腫れ

▶ 主な適応疾患:骨折・捻挫・打撲・術後浮腫
骨折や手術後の局所の腫れを抑える治打撲一方・桂枝茯苓丸
治打撲一方(じだぼくいっぽう)【ツムラ89番】 骨膜(骨の周囲の膜)の損傷に伴う痛みに対して効果があります。肋骨骨折などでは1週間ほどで痛みがとれる場合もあります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)【ツムラ25番】 骨から皮膚の間の中間層の循環改善に効果があります。微小循環障害を改善させ局所の腫れを抑えます。NSAIDsが使えない方にも安全に使用できます。


□関節の腫れ、熱感

▶ 主な適応疾患:偽痛風・急性・慢性の関節炎・関節リウマチ
関節の腫れや熱感を伴う偽痛風・リウマチに用いる越婢加朮湯
越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)【ツムラ28番】 熱を冷まし腫れを取る効果があります。腎機能が悪くNSAIDsが内服できない偽痛風の方に対しても有用です。原因不明の高齢者の足のむくみ・腫れに対しても有効です。


□筋肉の痛み

▶ 主な適応疾患:足底腱膜炎鵞足炎・慢性筋肉痛・腱鞘炎
足底腱膜炎や筋肉の慢性炎症に有効な薏苡仁湯(よくいにんとう)
筋肉の慢性炎症に対しては薏苡仁湯(よくいにんとう)【ツムラ52番】が用いられます。筋肉の浮腫や炎症をとる効果があります。鵞足炎や足底腱膜炎などの付着部炎の症状に対しても有効です。効果発現までやや時間がかかり2-4週程度を要します。


□交通事故後などの長期間にわたる痛み

▶ 主な適応疾患:交通事故後遷延性疼痛・むち打ち症・慢性疼痛(心理的要因を伴うもの)
交通事故後の長引く痛みや精神的不安を和らげる抑肝散(よくかんさん)
葛根湯(かっこんとう)【ツムラ1番】 首から肩にかけての重だるさや緊張に対して効果があります。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)【ツムラ25番】 肩周辺の重だるい症状は血行障害が影響していると考えられるため、微小循環の改善を促す本剤は有効です。
抑肝散(よくかんさん)【ツムラ54番】 一般的な痛み止めであるNSAIDsが効きにくくなっているような長期の痛みは精神的な要因が関与していることが多く、本薬剤が用いられます。慢性疼痛ガイドラインにも有用性の記載があります。


整形疾患以外の漢方

□風邪症状

・初期 悪寒があるとき
風邪の初期症状(悪寒・発汗前)に有効な麻黄湯による免疫活性
麻黄湯(まおうとう)【ツムラ27番】 汗が出る前であれば、効果があります。一時的な体温上昇を促し、免疫応答を高め、発汗を促し、解熱させます。早期服用で高い解熱効果が期待できます。発汗が得られるまで2〜3時間おきに飲むのがコツです。比較的体力のある若年者に内服がすすめられます。


・後期 体力低下の改善
風邪の後期や感染症後の体力低下・だるさを改善する補中益気湯
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)【ツムラ41番】 なんとなくだるい、元気が出ないという状態からの改善を促します。COVID19感染後の易疲労感に対してもこの処方が有効です。


□咳

・乾いた咳
喉の乾燥や乾いた咳に潤いをもたらす滋陰降火湯(じいんこうかとう)
滋陰降火湯(じいんこうかとう)【ツムラ93番】 肺に潤いをもたらし咳を鎮めます。感染後咳嗽(風邪をひいた後の咳)、慢性的な乾燥性の咳に用います。


□鼻水

鼻水・くしゃみ・花粉症の症状を和らげる小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)【ツムラ19番】 さらさらとした鼻水、咳、くしゃみなどに対して効果があります。アレルギー性鼻炎・花粉症にも適応となります。


□尿路結石

尿路結石の発作時の痛みや石の排出を促す漢方治療
発作時は芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)【ツムラ68番】にて尿管の攣縮時の痛みを抑えます。石の排出を促すのは猪苓湯(ちょれいとう)【ツムラ40番】になります。


□めまい

良性発作性頭位めまい症や低気圧によるめまいに有効な五苓散
耳石が原因となる良性発作性頭位めまい症では五苓散(ごれいさん)【ツムラ17番】を2包内服すると、2時間ほどで効果が出ることが多いです。二日酔いや気圧変化による頭痛にも有効です。


□不眠

イライラや精神的な緊張による不眠を整える柴胡加竜骨牡蛎湯
いらいらして胸がつかえるような場合、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)【ツムラ12番】が有効です。


□胸がつかえる・のどの違和感

喉の違和感や自律神経の乱れによる不安感を改善する半夏厚朴湯
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)【ツムラ37番】 自律神経の乱れからくる不安感、のどから胸にかけてのつかえ感を改善します。


□不穏・認知症周辺症状

認知症に伴う周辺症状(せんもう・不穏)を穏やかにする抑肝散
抑肝散(よくかんさん)【ツムラ54番】 せん妄などの様々な認知症周辺症状に対しても効果があります。


□肥満

高度肥満症の改善をサポートする防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)
比較的高度なものに対してでないと効きにくいですが、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)【ツムラ62番】が有効です。変形性膝関節症など関節への負担軽減を目的とした体重管理の補助としても処方します。便秘症状の改善にも有効です。



よくある質問

整形外科で漢方薬は健康保険で処方してもらえますか?

はい、当院では漢方薬を保険診療で処方しています。1割〜3割の自己負担でお受けいただけます。保険診療のため、他の処方薬と同様の自己負担額で済みます。整形外科で漢方を保険処方できる点は、当院の特徴のひとつです。

効果が出るまでどのくらいかかりますか?

薬剤によって大きく異なります。構成成分の少ない芍薬甘草湯(ぎっくり腰・こむら返り)は5分で効果が出るものもあります。一方、成分の多い牛車腎気丸・八味地黄丸(下肢しびれ)などは4週程度かかることが多いです。通常は2週間服用して効果を確認します。

漢方薬に副作用はありますか?

比較的安全な薬ですが副作用がないわけではありません。甘草を含む薬剤(芍薬甘草湯など)の長期投与では偽性アルドステロン症(血圧上昇・浮腫・低カリウム血症)のリスクがあります。麻黄を含む薬剤は高血圧・心疾患のある方には慎重に使用します。柴苓湯など一部の薬剤は長期投与で間質性肺炎のリスクがあるため、定期的な経過観察を行います。

今飲んでいる薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?

多くの場合は併用可能ですが、漢方薬に含まれる生薬によっては相互作用が生じることがあります。必ず現在服用中のすべての薬をお知らせください。漢方製剤同士では2剤程度であれば問題なく服用できることが多いですが、3剤以上では甘草の量などが問題となることがあるため、慎重に判断します。

1日何回飲めばいいですか?

一般的な用量は1日3回とされていますが、朝晩の2回でも有効な薬剤がほとんどです。ただし芍薬甘草湯は甘草の量が多いため、継続して飲む場合は1日1包が望ましいです。

食前に内服しないとだめですか?

食前や食間(食事と食事の間、午前10時や午後3時など)の方が吸収は良いとされていますが、食後でも多少吸収が落ちる程度です。飲み続けることの方が大切ですので、生活スタイルに合わせて無理のない時間帯に服用してください。

粉薬が苦手なのですが飲めますか?

ゼリーやオブラートに包む方法、少量のお湯に溶かして飲む方法があります。苦い製剤は甘い飲み物と混ぜると苦味が増幅することがあるため、ココアやコーヒーなど苦みのある飲み物と混ぜる方が飲みやすいことがあります。


【参考文献】
小川 健次, ほか: 腰部脊柱管狭窄症に対する牛車腎気丸の臨床効果. 日本東洋医学雑誌 58(2): 247-254, 2007.
元島 清香, ほか: 肩関節周囲炎に対する二朮湯の検討. 肩関節 27(3): 447-450, 2003.
小野村 健太郎: へバーデン結節に対する桂枝加朮附湯の治療経験. 漢方医学 26(1): 44-46, 2002.


この記事の監修:辻 大祐
辻整形外科クリニック院長(石川県金沢市)
日本整形外科学会 専門医 
日本骨粗鬆症学会 認定医 
日本リハビリテーション医学会 認定臨床医